2012年03月01日

ちはやふるから学んだこと

今期のTVアニメで最も良いと思うのは「ちはやふる」です(2クールものですから前期の作品と言うべきかもしれませんが)。原作も大好きですが、例えば総集編が大変楽しかったように、アニメも本当に素晴らしい完成度と思います。

ちはやふるをみていてふと思ったことがあります。いまさら何を言うのかと思われる方もおいでと思うのですが、脇を固めるキャラクターを描く、特にその成長を描くというのは、主人公の描写において非常に大きな意味を持つんだなぁと感じました。ちはやふるでいうと机君です。

彼の成長があると、主人公であるちはやが普通なら不自然と思えるくらいの成長をしたとしても、ストーリー上まったくそんな不自然さを感じない。地に足の着いた作品に見える。

物語の作り方の技術的側面を一つ学べたなと思った作品です。

(松)
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2011年06月08日

「デスカッパ」日本上陸!

とてつもない変な映画を観てしまった。

アメリカ完全出資・日本で制作、アメリカで先行公開
&DVD化して大ヒット。その過激さから一時期は日本
では公開不可能と言われ、ファンからの熱い要望によ
り逆輸入されるや否や空前の大ヒットを記録した
”TOKYO SHOCK”シリーズ『片腕マシンガール』
『東京残酷警察』その正統なる第3弾が本作
『デスカッパ』である。
http://deathkappa.seesaa.net/
そんな宣伝文句につられてうっかりジャケ借り。
今回の作品紹介はお勧め作品ではなく、こんなへんてこ
な作品がアメリカで支持され(本当か?)ていることの
検証として、怖いもの見たさの感覚で手に取ってもらっ
ても良いかもしれません。

何しろアキバ系+ガメラ+ウルトラシリーズ+特殊メイ
ク+カッパを具にしてレトロ特撮へのオマジューの海苔
で巻いた「超!KAPPA巻き」です。

本来「特撮」とは実写不可能な映像をあらゆる手段を使
ってリアルに見せるもの。今作はリアルさとはほど遠い、
昭和50〜60年代の特撮らしさをいかに出すかに全勢力を
注いでいる。何しろ戦闘機シーンは懐かしのF104
スターファイターがあからさまにピアノ線に吊るされて
飛んでいる。核爆発のシーンは水槽に牛乳をこぼし逆さ
に撮影。ラジコン戦車が街中を進撃。自衛隊はわずか3機
の戦闘機を失っただけで「我が兵力壊滅状態… 」とすべ
てのシーンに突っ込みどころ満載。
むしろこんな作品がアメリカ資本で商品化されることが
奇跡です。

しかしです。コミックラウド編集長という立場で(どんな
立場だ!)
一般に映画化される作品の傾向として「小説」や「漫画」
が大ヒット→映画化、もしくは「映画」が大ヒット→ノベ
ライズ化や漫画化という流れがありますが「デスカッパ」
は映画より漫画作品として再構築したほうが非常に相性の
良い作品です。

ひょっとしたらコミックラウドの駕籠真太郎先生に描いて
もらったら世紀の奇作になること間違い無し。

ぜひ、観る機会がありましたら駕籠真太郎先生のキャラク
ターに置き換えて楽しんで下さい。そんな妄想をかき立て
られる映画です。
                     (カンチ)
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2011年05月15日

「きょうの猫村さん」に見る鉛筆タッチの作品

毎日1コマづつ更新で話題になりブルータスで連載
されている、ほしよりこの「きょうの猫村さん」。
ファンの方も多いと思いますが、私も大好きで新刊
が出ると購入しています。

そもそもネット火がついた作品の多くがいわゆる
雑誌漫画連載系の正統(?)な漫画家さんではな
く、ほとんどアシスタント経験が無い一般の方や
アート系の表現が得意な方が中心。
そこにはいわゆる職人芸的なペンと紙の世界は
存在せず、紙に鉛筆でさらさら描いたものがデー
タ化され発表されている。

「きょうの猫村さん」を初めて見た時の衝撃は未だ
忘れない。か細い鉛筆で描かれた絵柄にとても印刷
物としてはこれほど不適切な作品はあるのだろうか。
しかも巧いのか下手なのかまったく分からない。

80年代に流行ったヘタウマとは違った領域。

しかし作品の面白さは印刷不適切&下手な絵を通り
超して大ヒット作品へと成長。

あらためてプロットやストーリーの面白さこそ作品
の命でありオリジナリティであると実感。

しかし、我がコミックラウドでも鉛筆漫画が浸透
していたとは編集長の私でもびっくり。
今月連載2回目になる「懐中亭主」は一目で鉛筆の
ぬくもりある作風と作品のノスタルジックな世界が
マッチして独自の作品として確立していますが、
あのクアドリフォリオですら鉛筆で描かれたものを
スキャンしフォトショップで加工しているとは驚き。
あんなシャープな線が出せるとは。作家さんの工夫
とテクニックに頭が下がる思いです。

しかももう1つ意外なことは電子書籍と鉛筆タッチ
の相性が良いことです。ネット上で発表された作品
に鉛筆タッチが多いことも必然かもしれません。

単なるデジタルとかアナログとかいう次元ではなく
漫画作品の表現やアシスタント経験の修業時代の有
無といった制作環境やプロセスそのものが変わって
いくのでしょう。
                  (カンチ)

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2011年05月08日

「鈴木先生」TVドラマに見る新感覚な切り口

武富健治先生原作の「鈴木先生」がTVドラマ化され
ました。
実は昨年、コミックラウドに掲載をお願いしたくて
直接お会いしていたのです。そのとき武富先生は連載
を抱えており快諾をいただくことができなかったので
すが、我々編集部の目の付けどころも間違っていなか
ったと密かに自信をもったのです。

■何故「鈴木先生」がドラマ化されたのか?

漫画アクションに不定期連載されている「鈴木先生」
始めて目にしたときは正直「今の時代の作品?」と
疑問に思ったのも事実ですが、逆に言うと今の時代
に比べるものが無い作品であり、学園漫画として異色
のできであると感じました。

学園ものといえば「金八先生」「熱中時代」「ごくせん」
等々たくさんありますが、基本熱血教師がいて生徒に
関する事件を独善的に解決していくドラマになっていま
す。もちろん実在しないようなデフォルメしたキャラの
先生の言動や行動に面白さがあり引き込む力があるの
ですが、本当に現代の若者に求められる姿だろうかと
疑問に感じることも多いのです。

その点「鈴木先生」はどこにでもいる普通の教師であり
決してヒーローではない。むしろどこか偏屈なところも
ある生身の人間です。そして生徒に関する事件も実際の
教育現場にある日常の問題をテーマに取り上げています。

この日常感と普通感が過剰な演出の多いTVドラマのなか
では斬新なのでしょう。

私も大学や専門学校で教鞭をとっている身ですので、
この日常感は身にしみて共感できます。

■経験の中からしか作品は生まれない

人はその人が体験したり見たり読んだりした経験値から
作品を生み出します。その経験値をどんな角度で切り込
むか、もしくは複数の経験をどのように組み合わせるか
によって新しいものを生み出せるのです。

真正面から見るのか斜め横から、真上から上からと切り
とる角度で何でも無い日常が新鮮なものに変わり、さら
に日常テーマだからこそ共感を与えることができる。

普段から生活者としての観察眼を研ぐことこそ需要なの
ですね。

これから漫画家を目指すみなさん、寄り道なんて道は
ありません。すべて作品の肥やしになります。好きなこ
とを突き詰めることは大切ですが、狭い世界しか関心を
しめさないことは自らオリジナルを作ることを拒否して
いることになります。

ぜひともあなただけの世界や経験を作品にしてください。
何時の日かコミックラウドで掲載できたら最高ですね!
                    (カンチ)
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2010年12月12日

天 天和通りの快男児

福本先生の作品は鷲巣戦に止めを刺すとは思うのですが、天というアカギの最後を見取った人物を描いた本作「天 天和通りの快男児」も、絶対に見逃せない作品だと思います。特に私のような凡人にとっては、アカギや天よりもひろゆきのあり様に感じるものがあります。

アカギがひろゆきに語った「もう…漕ぎ出そう……!いわゆる「まとも」から放たれた人生に………!」という言葉は、こんな歳になってしまった私の背中を押してくれる一言でもあります。それでも凡人だからこそ惑うのですが。

こういった名言をどうやって翻訳するのか見当もつきませんが、あるいは行け行けドンドンで上昇気流に乗っている国でこういう言葉が響くものなのかわからないところもありますが、でもこういう言葉もむしろ普遍的なものなのではないかと思うのですが。

(松)
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2010年11月29日

大使閣下の料理人

引き続き「コミクラに載せたいマンガ」ですが、前2作がそれぞれ個性的だったのに比べ、今回のは間違いなくどなたにでもお楽しみ頂ける(前2作も間違いなくお楽しみ頂けると確信していますが)作品、西村ミツル先生原作、かわすみひろし先生漫画の「大使閣下の料理人」。こういう特定のジャンルを深堀した作品は、コミックラウドのクアドリフォリオ2同様、それを好きな読者の皆様には強く支持されるものと思います。

本作はさらに全ての料理が深く登場人物の内面に係っており、登場人物の単なる技能を示すだけのものというのは出てきません。だからこそこの作品は何度読んでも楽しく、何度読んでもジーンと来るのだと思います。また、無能(=害悪を撒き散らすだけの人)がほとんど出てこないというのも読書感を良いものにしてくれます。時々思い出したように読みたくなる作品です。

ところで、みうらって苗字じゃなくて名前だったのね!名前だと思ってた!!

(松)
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2010年11月26日

ピンポン

ヨコハマ買い出し紀行からコロっと変わりまして、久しぶりに読んでやはり面白いなぁと思ったのが松本大洋先生の「ピンポン」。映画化されたくらいの作品ですから、誰でも知っている作品と言ってよいのではないかと思います。

私は才能ある人間が好敵手を得て伸び伸びと成長していくストーリーが好きでして、逆にしょぼいチョイ悪がそれをセコく邪魔をする話は大嫌いです。そのポジションにいるべきでない人がそこにいて、上から押さえつけるとか横槍を入れるとかいうエピソードが来たりすると途端に読む気を失くします。

ピンポンに出てくるキャラクターは皆努力するという才能を持っています。そういうキャラクターが大好きです。絵も話も素晴らしい。

あと、それほど長くないところも良い。たしか以前、竹熊先生が仰っていたと思いますが、余りに長い作品はマンガビジネスに副作用が大きいと感じています。もちろんファンにとって好きな作品はいつまでも楽しんでいたいのですが、逆に新たな読者を入りづらくしますから。その点でも単行本5冊で完結しているピンポンは好きなのです。

というわけで、やっぱりこういう作品をコミックラウドにも掲載したいと思うのでした。

(松)
タグ:マンガ
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2010年11月25日

ヨコハマ買い出し紀行

こういう仕事をやっていますと、いろいろなマンガを読まなくてはならないのですが、物理的なスペースの関係もあり、その全てを購入するというわけにはいきません。どうしても借りて読んだり、マンガ喫茶で読んだりということも出てきます。そうしながら昔から気になってはいたけどなぜか読む機会のなかった作品や、改めて読み直してみてその良さを再確認する作品も増えてきました。そういう作品についてひとこと。

最近読んだものでは、芦奈野ひとし先生の「ヨコハマ買い出し紀行」がスーっと染みてきました。もっと若い頃ならこういう静かな作品はさっと読み飛ばしてしまったかもしれませんが、今は何度読んでも染み込んでくる様な感じがします。こういう作品をコミックラウドにも載せたいですね。海外のマンガファンにも長く楽しんでもらえる作品なのではないかなと思います。

この作品は14巻(新装版は10巻)で終わっているのですが、時代が変わり、世界が変わった後の話でも続けられそうに思います。まぁキャラクターが皆魅力的なので、違う登場人物(主人公を含む3名の女性陣を除く)でやっても感じが変わってしまうかもしれませんけど。

マンガファンにはもう皆まで言うな、みんな知ってる的な作品かもしれませんが、私には今まで読む機会がなくて良かった、今読めて良かった、というような作品でした。

(松)
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