最近ドラマ化ヒロインの件で話題になっている小説を読む機会がありました。著者が思い入れを持っているあるものを素材に、様々な事件を解決しつつ、それまでは表に出なかった人間関係(もしくは絆と言いますか)が浮かび上がってくるお話です。非常に面白い小説だと思いました。
面白いだけでなく、作品の構成といいますか、成り立ちに興味を覚えました。
小説であれマンガであれ、現代のように作品が溢れかえっている状況では、他作品と違う要素が必要になります。例えばガンマニアやミリタリーオタクの作家の作品では、銃器に関する薀蓄が(言葉にならずとも)そこここにちりばめられていることがあります。そしてそれが真正であればあるほど、作品がリアリティを持ち、そここそが他作品との違いを生み出します。
作家なら誰でもなんらかのこだわりを持って自作の創作に臨むと思いますが、それを作品に昇華することは容易ではありません。作者の思いが強ければ強いほど、それ以外の部分、作品を構成する多様なパーツのために使うエネルギーが足りないことが往々にしてあります。本来ならば、核となる素材から始まって、より大きなドラマを描くことにエネルギーが必要なのです。
この小説は、著者の好きなものを中心にしながら、徐々に手を拡げつつ、より大きなドラマへと進めていっています。そこを非常に楽しく拝読しました。こだわりアイテムを扱うことだけに汲々とするのではなく、余裕を持ってドラマ作りをしているとでもいうのでしょうか。
弊誌にも作者のこだわりをその中心に据えて紡がれている作品がいくつかあります。それらの作品がより良いものになるよう、一つのアイテムを越えてさらに大きなドラマを描けるよう、作家と共に編集としての立場からできることを探している日々です。
(松)
posted by コミクラブログ at 23:59|
Comment(0)
|
TrackBack(0)
|
編集部の日常